いちご100% 第163話 感想
「あたしから」
[試験を終えた真中に、東城はあの日の事、そして自分の気持ちを打ち明ける。翌日、真中の元には、思い出の数学のノートが届けられた…。]
冒頭、さすがの西野も、東城の只ならぬ様子を察したのでしょうか、自分のターンを放棄してしまいます。アンタええ娘や…。それでもしっかりとマフラーをかけてあげるのはさすがです。真中にもこれくらいの余裕が欲しいですね。っていうか、待っていた自分の彼女に目もくれず、声もかけずに「東城!」とは…若い。若すぎます。
やはり唯は、東城に迷惑をかけたと思ったのでしょう。良かれと思って家庭教師を頼んだのに、その結果彼女のいる身で真中が東城とまちがいを犯してしまった…と。そしてそれを聞いた東城も、もうこれ以上周りに迷惑をかけまいと、自分の気持ちを整理する決意を固めたのでしょう。
東城にとって真中は、初めて心を許した異性でした。内気で自分の世界に閉じこもっていた東城は、真中に自分の書いた小説を褒められたことで、初めて「他人に認められる」ことに喜びを覚え、次第に心を開いていきました。高校に入ってからも、映像研究部ではかけがえのない仲間達と共に一つになって作品を作り、自分に想いを寄せる天地や、さつき、向井、そして西野といった「恋敵」との関係は、自分にさまざまな思いを芽生えさせました。その心の成長や経験が、東城の表現により深みを与えたことによって、ついにはその才能が世の中に認められるということに結び付いたのでしょう。
そしてその傍らには、いつも真中の姿がありました。自分をここまで導いてくれた真中に、東城はずっとずっとこのままそばにいてほしいと願いました。しかし、それは叶いませんでした。東城も真中も不器用だったのでしょう。お互いに、自分の心の中にある想いをうまく相手に伝え、心を重ねあうことは、最後まで出来ませんでした。そして真中は、自分に真っ直ぐに向き合って接し、想いを伝えてきた西野を選んだのです。
それでも東城は、真中に対する特別な感情を抱き続けました。そしてそれは「恋心」の一言で表現できるものではありませんでした。むしろ、「恋心」はその感情において足かせになっていたのでしょう。だからこそ東城は、その感情から「恋心」を取り除く行為として、キスをしたのではないでしょうか。
全てを打ち明けた東城。全てを知った真中。お互いの流した涙には、悲しみ、後悔、葛藤、そして感謝…いろんなものが混じっていたと思います。そしてこの涙は、2人の心を洗い流し、また新たな気持ちで前に進むためにも必要な涙だったと思います。
さらに、真中との接点であり、すべての始まりだった、数学のノートに書いた小説。これを東城は、ついに完成させました。これは、東城と真中が別々の道を歩き出す前に、何としても完成する必要がありました。これを完成させたことも、気持ちの整理をつけるきっかけになったのかも知れません。そして東城がこの小説を真中に託した意味は…?
さて、「ラブ・サンクチュアリ編」に続き「受験編」も一応の完結を迎えたわけですが、前章の西野に続いて東城の魅力が存分に描かれており、よかったと思います(アンチ東城も少しは減ったか?)。そしてこの漫画の幹の部分である、西野-真中-東城の3人の関係もようやくこれで落ち着いたと思います。途中いろいろありましたが、誰も悪者になることなく、最後までこの軸をずらさずに描ききった河下先生は凄いと思います。おそらくラストスパートであるかと思いますが、最後まで頑張って下さい。
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